2009年2月16日 (月)

「日高川入相花王」あらすじなど

日高川入相花王(ひだかがわいりあいざくら) 五段。浄瑠璃。竹田小出雲(三世竹田出雲)・近松半二・北窓後一・竹本三郎兵衛・二歩堂(にふどう)合作。宝暦九年(一七五九)二月一日大阪竹本座初演。

【構想】『今昔物語集』巻十四「紀伊国道成寺僧写法花救蛇語」、謡曲「道成寺」、絵巻物『道成寺縁起』、長唄「京鹿子娘道成寺」等に見える紀州道成寺伝説を扱うが、桜木親王と藤原忠文との皇位継承争い、平将門の遺志を継いで天下をねらう藤原純友の野望を縦筋として複雑多岐な運びを展開する。謡曲「錦木」も二段目に取り入れてある。

【あらすじ】第一-朱雀帝は病弱なので弟君桜木親王に位を譲ろうとするが、左大臣藤原忠文は自分が位につこうと、親王を陥れることを企む。桜木親王は兄の病気平癒析願のため紀州道成寺の鐘供養を命じる。一方忠文は比叡山の剛寂僧都に命じて病気平癒の析祷と見せかけて天皇調伏の呪詛をさせる。桜木親王はかねてから小野大臣の娘おだ巻姫と恋仲であった。親王が忍んできた小野大臣の館を忠文らの軍勢が取り囲む。小野大臣の館に仕えるゆらの戸の弟藤原純友が忠文のたくらみを知って親王らを救う。
第ニ-桜木親王は、一旦は睦奥で六孫王源経基の乳人朝路にかくまわれるが、山伏安珍と名を変え、更に熊野の真那古の庄司のもとに落ちていく。おだ巻姫も朝路の娘おむつを供にして、これを追う。
第三-経基は忠文の讒言によって朱雀帝の落胤を討つ命令を受けて苦悩する。純友は主君平将門の遺児が人質となってこの館に捕らわれていると聞き、四塚(よつづか)大作と名乗り身をやつしてわざと捕えられていた。朱雀帝の落胤の身代わりをめぐる騒動の中で、藤原純友はその皇子こそ将門の遺児であることを知る。純友は反逆を思い立つが経基に反逆心の翻意を迫られ、その仁義に感じて切腹して果てる。
第四-「真那古庄司館の段」「渡し場の段」桜木親王は真那古の庄司の館に立ち寄るが、おだ巻姫も親王を探してここに逗留していた。以前親王を見初め、激しい恋心を抱いていた清姫は親王を慕う。忠文の一味鹿瀬十太が安珍を親王と疑うので、庄司は安珍を清姫の許嫁と偽るが、清姫は真実と思いこむ。安珍は危険を避けるためおだ巻姫とともに庄司の家を抜け出す。清姫は僧剛寂にたきつけられ、嫉妬の一念で蛇体となり、あとを追う(「道行思ひの雪吹(心)」)。
日高川にたどり着いた清姫は、渡し守に舟を出すよう頼むが、渡し守に拒みまれる。清姫が川へ飛び込むと、その姿は鬼か蛇の様に変り、泳ぎ渡る。清姫は道成寺の境内に安珍をさがす。庄司が清姫を刺すと血汐は炎となって燃え、鐘の中から剛寂僧都が三種の神器を持って現われる。忠文の味方と見えた剛寂(道成寺の僧)は、親王の味方であった。清姫の嫉妬心を利用し、親王を清姫が取り殺したという風聞をたてさせ、忠文を油断させようとのことであった。
第五-忠文一味が酒宴を催すところに経基・秀郷・剛寂らが押し寄せ、忠文を誄罰する。

道成寺伝説を扱った芸能では能や長唄が有名であるが、浄瑠璃では本作が代表作として挙げられる。歌舞伎でも日高川の場だけを清姫の人形振りで演ずることがある。

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